学校インタビュー

昭和学院小学校 山本校長先生インタビュー

山本校長 2022.05.06.

今年、昭和学院小学校の校長先生に就任されました山本校長からお話を聞いてきました。先生の経歴や教育観などたくさんお話くださいましたので是非ご覧ください。

質問者 キッズさくらカレッジ幼児教室「上田香織」

上田香織今日は先生のお話をいろいろと聞かせていただきたいと思いますのでよろしくお願い致します。
まず最初に先生の経歴をお聞かせ願えますか。
山本校長私は生まれが高知県でして、教員のスタートも高知県になります。高知市の公立校に11年在籍し、その後高知大学教育学部附属小学校に移りましてそちらで3年間おりました。それから東京都にある筑波大学附属小学校に着任しまして、21年間、算数教育に携わってきました。そして、昨年から当校で副校長としてお世話になり、今年から校長になりました。
山本校長実は、13年前から昭和学院小学校の算数の授業改善のために講師として招かれまして、年3回当校の授業を拝見して改善点を指摘したり、あるいは私が実際に授業をして見せたりしてきました。鈴木前校長や島田元教頭からは、当校の先生方の意識が随分と変わったと言っていただけました。それがご縁でお声かけをいただきまして今に至っているわけです。
上田香織以前、筑波の先生にお越しいただき勉強会をしているというお話を聞いたことがあります。それが山本校長のことだったのですね。
上田香織筑波の先生の指導はなかなか厳しいというお話を聞きました。
山本校長それはきっと私の事ですね。ですが、それを経た今の昭和学院小学校では先生同士が互いの授業を見合い、率直に意見を言い合うということが当たり前になってきています。
私のいう厳しさとは、仲間の授業を見たら、授業後に「あの場面では私ならこうする、そうすればこういった効果が期待できたはずだ」という自分なりの代案を必ず示すということを意味します。すると、自分なりの構想を持って授業展開や子供の様子をしっかりと見なければなりません。結果的に子供の状態を見取る力、そして授業の本質を見る力が鍛えられてきます。
上田香織分かりました。では次の質問をさせていただきます。
先生の教育観につきましてお聞かせください。
山本校長学校での子供は笑う存在、つまり学んで笑顔になるものだと考えております。その笑顔には二通りありまして、一つは居心地の良さ、安心感によって得られる笑顔です。これは学校教育の大前提です。教室が、先生が、お友達が好きだということの表れです。ここにいるだけで楽しいという気持ちからくる笑顔です。
もう一つは、今までの自分には見えていなかったものが見えてきた瞬間に見られる笑顔です。これは知的な刺激によって生まれる笑顔と言えます。教育をしている場だからこその笑顔であり、遊園地の遊具が楽しいという気持ちから生まれる笑顔とは意味が違います。
山本校長この笑顔は、子どもが自分なりにやろうとしてもうまくできず、苦労しながら試行錯誤した結果できるようになった時に自然に生まれてくる笑顔なのです。例えるならば自転車です。自転車とは何かを語った説明したり、「ハンドルを持ってペダルをこいで乗ります」と乗り方を説明できたとしても、実際に自転車には乗れるとは限りません。いざ乗ろうとすると、最初はうまく乗れなくて何度もこけます。しかし、試行錯誤していく中で徐々にコツをつかんでいき、乗れるようになった瞬間、間違いなく誰しもが笑顔になります。これが、今までの自分には見えていなかったものが見えてきた瞬間に見られる笑顔です。そしてこのようにして獲得できた自転車に乗る技能は決して消えることはありません。
逆に、乗り方に関する単なる知識としての情報は、実体がないものですからやがて消えてしまいます。
山本校長本校で目指している教育は、子供自身が試行錯誤し、「分かった」という状態に至ることです。その試行錯誤のきっかけが子供の問題意識です。先生が、何かについて考えてみましょうと言ってから考えている子は受け身の子です。そうではなくて、自分から考えたくなる子にしたいのです。
山本校長以前の保護者セミナーの際にも同様の話をしまして、そこでは算数の模擬授業を通して保護者の皆様に子供の気持ちを味わってもらいました。そうすると、自分(保護者)が勝手に考え始めているということを自覚されたのです。私からは一言も「考えましょう」とか「お話しましょう」と言っていないにも関わらず、勝手にしゃべっているのです。ですから、そういった場を整えることが学校教育に携わる我々の仕事だと言えます。
山本校長それから、子供が躓いたり転んだりした時の対応が大事です。つまり、転んだ時にどのように立ち上がらせるのか。私は、周りから手を差し伸べて起こしてあげるのではダメだと考えています。直接的に手助けするのではなく、躓いた子供に共感する姿勢を大切にしたいものです。そして、子供と一緒にどうしたらよいか悩むのです。この共感が、子供が自分で新しいことを獲得する場では欠かせません。躓かないよう、転ばないように親が先回りするような過保護な教育は勿論ダメです。教え込まれる子供は決して笑いません。
上田香織共感と子供を認めるということは我々も意識するようにしていることです。下手に褒めすぎてもいけませんし、教えるということだけでは一時の知識だけで残らないということは長年経験しながら指導してきました。また転んだ際に立ち上がらせるのではなく、子供自身が立ち上がるのを極力待つようにしているのですが、先生のお話を聞きやはり手を引いて立ち上がらせるのではダメなのだと再確認できました。
山本校長叱るという行為がありますね。これは教育上では確かに必要な場面があります。しかし叱っても子供は育ちません。なぜかといいますと、叱るはただ「そっちに行ってはいけない」と制御しているだけだからです。どちらに進めばいいのかを示していません。それに対して、褒めるという行為は子どもを育てます。ただし、闇雲に褒めても子供は育ちません。例えば、「今のあなたがした~は、みんなをいい気持ちにするからとても素晴らしいね」と、「何が」「どのように」いいのかを具体的に褒めるのです。「誰にとって」いいのかを伝えることで他者意識も育ちます。「どのように」いいのかを伝えると、自分の行いの効果や意味が分かるようになります。実は、多くの子供はほとんど無意識の状態で活動しています。ですから、今あなたがしていることにはこういった効果があるんですよと先生が褒めることで、価値を伝えているのです。すると、子供は自分がしていたことを振り返り意識します。自分がしていることを自覚させていきながら、よい方向を見出させることを学校教育では大切にしたいものです。
上田香織先生が今年校長先生になられまして取り組んでいきたいと考えていることを教えてください。
山本校長先生たちの授業力をもっと高めたいと思っています。その一環として毎日先生方の授業を見に行ってます。私が来るだけで緊張すると言われる先生もいますが、それでいいと考えています。授業を見て授業者の意図を聞いたり、自分だったらこうするといったアドバイスも行います。私が講師として本校に訪れていた頃は、年3回だけだったのが毎日になるわけですから授業を見られる機会が圧倒的に増えたわけです。そうすると見られるだけでなく私に質問できる機会も増えました。その質問に対し私が具体的な意見を言うためにも事前に授業の目標を書いてもらっています。
山本校長目標と言いますと、例えば「2けた×2けたの計算ができるようになる」というように、一般的には1,2行で書くものだと思われています。しかし、これでは抽象的で具体的な授業の姿が分かりません。どのようなことをして子供が2けた×2けたの計算ができるようになるのか、つまりプロセスが見えないのです。また、授業はどのように導入するのか、その意図は何なのか。ただ単に教科書と同じようにするのでは不十分だと考えています。教科書で扱われている場面や数値の設定の意図を考え、自分なりの考えを整理し、その上でどうしたら子供が計算について考えようとするのかを意識させています。先ほども申しましたが、先生が「考えましょう」と言ってから考える子供は受け身なのです。そうではなく、この計算はどうしたらいいんだろうかと子供から考えるようにすること、これが正に教師の仕事ですからそのためのプロセスやきっかけを文章で書いてもらうようにしています。
山本校長特に、文章にしてもらうのは、論理の整合性を自覚してもらうためです。いくら自分の頭の中で思っていても、いざ文章に書き表すと授業の流れが繋がらないということに気づくことがあります。細部まで検討し、最終的に目標に至るまでの構想が文字で書き起こせたならば、その授業は設計できたと言えるわけです。つまりそれくらい構想を練るんだということを先生方に伝えています。ちなみに、現在、先生方の中には目標をA4用紙一枚分くらい書いて来られる方もいます。確実に授業力が育ってきていると実感しています。
山本校長このような授業力は、他の教科の授業にも転移していきます。何の教科でも、子供が思考を深めていくにはきっかけが必要です。また、子どもは1つの授業で考えていることは決して一つだけではありません。授業が進むにしたがって、考える対象が変わっていきます。ですからその変容のプロセスを授業の中でどう構成するかを具体的な子供の姿でデザインします。教師がすることを書くのではなく子供が何をするか、子供目線で考えてみることで、子供理解、即ち子供に対する見方も鍛えられてきます。このような先生方の変容自体を楽しみにしているわけです。
上田香織質の高い先生方が多いわけですね。
では、最後の質問になります。これから受験を考えている保護者に向けて一言お願いします。
山本校長まずはしっかり話を聞けることが大切だと考えています。それから自然に挨拶ができるのがいいですね。言わされるのではなく、自然に言えるのがいいです。さらに「ありがとう」「ごめんなさい」が言えること。これは生きていく上の基本だと考えています。学校ではこれができて初めて安心感の笑顔が生まれてきます。逆に、もしできないと居心地が悪くなります。「ありがとう」や「ごめんなさい」が無い環境っていやな気持になりますよね。小学校に入学してからも指導はしますが、基本的には「三つ子の魂百まで」なのです。小さい時からどれだけ自然に出来ているかが大事になるかと思います。
山本校長さらに、「子供にはちゃんと躓かせてください」と言いたいです。転ばないように、困らないように先回りして転ばぬ先の杖を与える保護者に出会うことがありますが、躓きや転ぶということが子どもの成長にとってどのような意義があるのかということを考えてほしいと思います。
上田香織経験泥棒だというお話を聞いたことがあり、まったくその通りだと思います。親が経験と取ってしまうのは良くないですね。
山本校長たくましく生きる、あるいは困っている人に共感できるようになる…、そのために失敗体験は欠かせません。悔しさを味わう体験が大事だということです。悔しい思いをした子は、悔しい思いをしている人の気持ちがわかりますから、本当の意味で優しくなります。ずっと転ばずに親にお膳立てしてもらってきた子の優しさは上辺だけかもしれません。人の気持ちが分かる人間に育てるためにも、このような経験を大事にしてほしいと思います。
山本校長また、先取り学習をする必要はないということを申し上げておきます。逆に、先取り学習をしているがゆえに、大事な問題発見能力の育成を阻害することになるかもしれません。子どもは「知ってる」ということで満足しがちです。しかし、このような先取知識は忘れて消えてしまうことが多いものです。例えば数です。「1から10まで言ってみましょう」と言えば、数えられる子供は「いち、に、さん、し、ご、ろく、しち、はち、く、じゅう」と言うでしょう。
山本校長続けて「今度は10から1まで言ってみましょう」というと、同様に「じゅう、きゅう、はち、なな、ろく、ご、よん、さん、に、いち」と得意げに答えると思います。
山本校長そこで、「すばらしい、数の順序がしっかり覚えられていますね」と言って終わるだけでは意味がないのです。私が育てたい一年生は、この時に「先生、変だよ」と言う子です。何かおかしなことに気づかれましたか。
上田香織何かあったでしょうか。
山本校長ありましたよ、確かに変なことが。
上田香織言い方でしょうか、「よん」と「し」。
山本校長そうです。他にも「しち」と「なな」、「く」と「きゅう」も変わっています。こういうことに気づけることって素晴らしくないですか。「あれ?読み方が違うところがある」「どうして読み方が変わるんだろう?」「英語でも変わるのかな?」…、このように子供の問題意識というのは変わっていきます。ですから、「知ってる」といって数を言っておしまいの子供は、大事な問題発見の目をつまれていることになるわけです。このような問題を発見できる力は、AIが発達する未来を生きていく人間にとって何より大事な力だと言えます。
そして、問題発見力を養っていくには、小さい時からの積み重ねが重要であり、突然できるようになることでは決してありません。教えられて学ぶような受け身の姿勢では決して出来るようにはならないのです。ですから、ご家庭でもただ出来ること、点数が取れることがゴールだと思うのではなくて、「どうして?」と疑問を発した子供を褒めてあげるようにしましょう。具体的には、「どうしてそう思ったの」と子供に返してあげて、問題発見をしたことが素晴らしいことなのだと伝えてあげるのです。
山本校長中には「なんで?」と子供から言われると鬱陶しいと感じられる方もいらっしゃるかもしれませんが、だからと言ってその場ですぐに大人が答えてはいけません。親がすべきことは、「私も分からない、どうしてでしょうね?」と言って、子供の疑問に共感することです。例えば動物に関する疑問が生まれたときには図鑑やインターネットを見て終わりにするのではなく、動物園に一緒に行きましょう。理屈を語るのではなく、本物の動物の大きさや色、においなど実際に体験させることを大事にしたいものです。そのような本物体験の有無が「知っている」と「分かる」の違いです。ですから幼児期にはそういった問題に気付いたときに一緒に考えてあげ、一緒に悩んで答えを見つけに行くといったプロセスを体験することを充実させてあげてください。本校では、そのような経験をした子を欲しております。
上田香織分かりました。本日は貴重なお話をいただきましてありがとうございました。

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